【第2回】転職市場の中でのサステナビリティ
昨今コンサルティングファームや上場企業など、多くの会社で注目を集めている「サステナビリティ」という言葉。社会的な責任や環境問題に関する取り組み等、消費者や関係する投資家からの要求も強く、今後の会社経営には欠かせないキーワードとなっています。
本連載記事では、サステナビリティについて、下記様々な観点から全4回で解説していきたいと思います。
1.サステナビリティ経営の大きな潮流
2.転職市場の中でのサステナビリティ(今回)
3.ビジネスキャリアとサステナビリティ
4.サステナビリティコンサルタントとして働く意義、キャリアデベロプメント
前回では、サステナビリティ経営の大きな潮流について、概説しました。第2回では、転職市場の中で、どのような求人が増えているか、求人企業、転職を検討されている方、すでにサステナビリティの領域で活躍されている方など、様々な方とお話させて頂く中で、感じたことをお話したいと思います。
過去のサステナビリティに関する求人の状況
2020年頃を思い起こすと、サステナビリティという言葉自体使われる機会が少なく、事業会社でも採用部門はCSR活動の推進だったり、IR(Investor relations)部門で、増えてきたESG領域の投資家対応のための広報だったり、ESGの社内啓蒙担当などのポジションが、時々出てくる程度でした。
また、コンサルティングファームはというと、Big 4などの監査法人側で、統合報告書作成、非財務情報の開示、格付け機関対応などの非財務情報に関わる求人が中心でした。加えて、PR会社や広告代理店が、IR対応、統合報告書の作成などの求人がありました。
その後、事態が大きく変わってきたのが、2021年の後半くらいでした。
②サステナビリティに関わる業務の増加
転職を検討されている方とお話すると、職務経歴書に記載はありませんが、サステナビリティに関わりのある仕事をしている方が多くいらっしゃいます。例えば、TCFD/シナリオ分析、GHG排出量算定、ESG投資ファンドの担当などで、皆さんがおっしゃる悩みは、「急に会社にやるように言われた」「どういう風に数値を出せばよいかがわからないので、海外の文献を調べながら、試行錯誤して計算している」「他部門に協力してもらったり、現場に数字を出してもらうように頼むのが大変」「投資先に格付け機関の評価を見ながら、改善状況を確認しているが、具体的なアドバイスができない」といったものです。
まだまだ試行錯誤の段階ですが、ご自身の仕事として、サステナビリティの領域が今後も増加し、意味のあるものになるだろうと感じている方が増えてきました。
サステナビリティ領域の求人の急増
事業会社では、サステナビリティ推進担当やサステナビリティ領域の専門分野に特化した求人の徐々に増えていきました。そして、コンサルティングファームでの求人も急増し始めました。
今までの監査法人側だけでなく、コンサルティングファームも業界別でサステナビリティのポジションや気候変動、生物多様性、人権とサプライチェーン、工場安全管理などより専門性の高い領域の求人も増えましたため、サステナビリティの分野で経験を積まれている方はチャンスの幅が広がっています。
そして特筆すべきは、サステナビリティ経営戦略が語れる戦略コンサルタントの求人の増加です。今まで企業の利益追求のために、環境(E)や社会(S)をおざなりにしてきたツケというのでしょうか。先進国では、生活が便利になり豪華な生活ができる裏で、気候変動により自然災害の増加、生産拠点である発展途上国での搾取、人権侵害など所謂、外部不経済が起こっており、それが、企業を取り巻くステークホルダー(政府、NPO、株主・投資家、取引先、顧客、社員)からの規制や情報開示要求を含む、プレッシャーが、企業のサステナビリティに対する問題意識を高め、今後は、環境や社会と共存しながら、企業活動をするために、それぞれの企業が自社のパーパス(存在価値)から、見つめなおし、経営計画を立てる必要性が出てきたといえます。
下記が最近の求人例ですが、合わせ鏡のようで、企業が取り組まないといけないこととそれをサポートするコンサルという構造です。
【事業会社の求人例】
サステナビリティ推進担当
環境領域担当~気候変動/生物多様性
環境経営戦略の立案と推進体制の構築(脱炭素・資源循環・生物多様性等)
サスティナブルファイナンスに関わる事業開発
経営企画(コーポレートガバナンス対応) 事業開発リーダー(カーボンニュートラル事業立上げ)
広報・ESG関連業務
CSR活動推進担当
ダイバーシティ インクルージョン担当
【コンサルティングファームの求人】
・サステナビリティ経営戦略
・サステナビリティトランスフォーメーション(SX)
・カーボンニュートラル経営
・非財務情報開示、格付け機関対応、統合報告書
・TCFDシナリオ分析
・サステナビリティ/非財務情報の保証業務
・生物多様性、自然資本
・LCA(ライフサイクルアセスメント)
・人権とサプライチェーン
・GHG排出量算定や情報システムのデジタル化
・サステナブルファイナンス支援
・環境・労働安全・衛生マネジメント(EHS)
・国際開発
・人的資本経営
次回では、サステナビリティの領域でお仕事をすることが、皆さんのビジネスキャリアの中で、どのような意味合いを持ちそうかについて、私の感じていることをお話したいと思います。
イーストウエストコンサルティング株式会社
コンサルタント
池田 和正
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