ラグジュアリー業界の市場動向と人材動向、採用課題、キャリアアップ【業界17年のヘッドハンター監修】
ラグジュアリー業界の現在の動向について
近年、日本におけるラグジュアリー業界は、高級ファッション、高級レストラン、その他高級な体験に対して関心が高まっています。
質の高い職人技、細部へのこだわりや洗練されたデザインに対して日本人は強いこだわりを持っています。それらがルイ・ヴィトンやシャネル、エルメス等の高級ブランドの日本市場での成功につながりました。
さらに最近では、ブルガリのホテルがオープンしたことが話題となりました。高級ホテルやリゾートに宿泊したり、高級な文化施設やエンターテインメント施設を訪れたりするような、贅沢な体験に対する需要も高まってきており、それらに対応するラグジュアリーブランドが出てきています。
ラグジュアリー業界における人材の需要・供給の状況
ラグジュアリー業界は専門的な知識を必要とするため、人材の供給はやや難しくなっています。
多くのラグジュアリーブランドは、ファッション、ラグジュアリーにおけるリテール、ホスピタリティの職務経歴を持つ人材を採用し、また英語を含む複数の言語を要求することがあります。
とはいえ、ラグジュアリー業界は日本市場への投資を続け、日本の豊かな消費者層のシェアの拡大に奔走しています。
そのため、ラグジュアリー業界における人材の需要は今後数年間は堅調に推移すると予想されます。 マッチしたスキルと経験を持つ個人が、成長速度が速いラグジュアリー業界でキャリアを追求する機会は大いにあります。
ラグジュアリー業界における人材採用の課題
日本におけるラグジュアリー業界の人材確保には、いくつかの課題があります。
主な課題としては、業界の競争が激しいため、企業が優秀な人材を引きつける必要性が高まっている点です。
日本のラグジュアリーブランドは、お互いに競争が激しく、更に他の業界で魅力的なキャリアを歩むことができるところとも競争しなければなりません。
その他の課題としては、特定のスキルセットとナレッジベースが必要な点です。ラグジュアリー業界では、高級品に対する深い理解、ハイレベルなカスタマーサービス、富裕層特有のニーズや期待に応える能力を持つ人材が求められます。そのため、経験や専門知識を兼ね備えた人材を見つけるのは至難の業です。
さらに、多くのラグジュアリーブランドでは、英語を含む複数の言語に堪能な人材を求めているため、言語の壁が課題となることもあります。特に、大都市圏以外の地方ではブランド店が少ないこともあり、言語のスキルを持った人材が限定的です。
最後に、ラグジュアリー業界は、長時間労働や高いサービスへの期待など、様々な要求がある業界です。そのため、この業界で成功するために切磋琢磨することを厭わない人材を見つけることは容易ではありません。
総括して、日本のラグジュアリー業界における人材採用の課題はいかに優秀な人材を引き付け、そして維持することです。そのために、企業が創造的かつ戦略的であるアプローチを取る必要があります。
具体的には、競争力のある報酬制度の提供、トレーニングや能力開発プログラムへの投資、従業員のエンゲージメントを高める企業文化の醸成などが考えられます。
ヘッドハンターが、優秀な人材をスカウトする上でのポイント
日本でラグジュアリー業界の人材を見つけるために、優秀なヘッドハンターは以下のポイントを持っています。
1. 業界を理解する
ヘッドハンターは、日本のラグジュアリー業界について、主要なプレーヤー、トレンド、課題などを深く理解する必要があります。これにより、優秀な人材を発掘し、クライアントに価値あるインサイトを提供することができます。
2. 転用可能なスキルを探す
ラグジュアリー業界における具体的な経験も重要ですが、ファッション、ホスピタリティ、高級小売など、関連する分野での成功実績や転用可能なスキルを持つ人材もヘッドハンティングの対象としています。
3. 語学力を確認する
ヘッドハンターは、特に日本のラグジュアリー業界で必要とされることの多い、英語などの語学力の高い候補者を見極める必要があります。複数の言語に堪能な候補者は、競争上有利となります。
4. 照会を求める
業界団体、専門家ネットワーク、現社員など、信頼できる情報源からの照会は、優秀な人材の貴重な供給源となります。
5. 社風への適合性を測る
日本のラグジュアリー業界には独自の文化や価値観があり、ヘッドハンターは候補者が組織や業界全体との適合性を査定することが重要です。
6. ポテンシャルを考慮する
ヘッドハンターは候補者の現在のスキルや経験だけでなく、組織内での成長と発展の可能性を考慮する必要があります。
7. テクノロジーを活用する
ヘッドハンターは、ソーシャルメディア、ジョブボード、候補者データベースなどのテクノロジーを活用し、日本のラグジュアリー業界で活躍する優秀な人材を発掘し、つながりを持っています。
これらのポイントに注目することで、ヘッドハンターは日本のラグジュアリー業界で最高の人材を発掘・獲得し、組織が強いチームを作り、市場での競争力を維持することを支援することができます。
ラグジュアリー業界でのキャリアアップについて、アドバイス
1. 専門知識を身につける
ラグジュアリー業界で成功するためには、マーケティング、商品開発、カスタマーサービスなど、特定の分野における専門知識を身につけることが重要です。これは、教育、トレーニング、実地での経験を通じて達成することができます。
2. ネットワーク
強力なプロフェッショナル・ネットワークを構築することは、ラグジュアリー業界でのキャリア形成に有益です。業界のイベントに参加し、専門機関に加入し、ソーシャルメディアを通じて同業者と交流しましょう。
3. 国際的な経験を積む
ラグジュアリー業界のようなグローバルな業界では、世界のさまざまな地域で働く経験を積むことは貴重なことです。視野を広げ、異なる市場や文化に対する貴重な洞察力を得ることができます。
4. 業界のトレンドに常に敏感であること
ラグジュアリー業界は常に進化しており、最新のトレンドやイノベーションを常に把握することが重要です。業界誌を読んだり、カンファレンスに参加したりと、学習の機会を探しましょう。
5. 順応性を持つこと
ラグジュアリー業界は成長ペースが速く、常に変化していることで知られているため、仕事への取り組み方にも順応性と柔軟性を持つことが重要です。そのためには、新しいスキルを身につけ、新しい責任ある仕事に就き、そして新しいアイデアや仕事のやり方を受け入れることが必要です。
6. 強い労働倫理を養う
ラグジュアリー業界では、成功はしばしばハードワークと献身に帰結します。強い労働倫理を持ち、卓越した結果を出すために、それを厭わないことです。
7. ダイバーシティ&インクルージョンを受け入れる
ラグジュアリー業界では、他業種以上にダイバーシティ&インクルージョンがますます重視されるようになり、企業はさまざまな視点や経験を持ち合わせた人材を求めています。自分のキャリアにおいてダイバーシティ&インクルージョンを受け入れ、これらの価値観を促進する企業を探しましょう。
全体として、日本や世界のラグジュアリー業界で成功するためには、専門知識を培い、強力なネットワークを構築し、国際的な経験を積み、業界のトレンドを常に把握し、適応力を持ち、強い労働倫理を持ち、ダイバーシティ&インクルージョンを共有することが重要です。
コロナ禍でのラグジュアリー業界の変化について
COVID-19のパンデミックは、日本および世界のラグジュアリー業界に大きな影響を与えました。日本では、パンデミックによって、ラグジュアリーブランドにおける重要な市場である、富裕層の消費者の従来の買い物や旅行のパターンが崩れました。その結果、消費者の行動や嗜好が変化し、ラグジュアリーブランドのビジネスを展開する方法も変化してきています。
パンデミックの結果、日本のラグジュアリー業界における大きな変化のひとつは、Eコマースとオンライン販売の加速です。多くの消費者が巣ごもりとなり、店舗に行かなくなったため、ラグジュアリーブランドもオンラインにより重点を置いた戦略を取らざるを得なくなりました。そのため、Eコマースプラットフォームやデジタルマーケティング、ソーシャルメディアへの投資が活発化し、ブランドは新しく革新的な方法で顧客との関わりを持つこととなりました。
日本のラグジュアリー業界におけるもう一つの変化は、ローカルカスタマーに焦点を当てるようになったことです。海外旅行が制限される中、高級ブランドは国内市場に目を向け、ローカルカスタマーにアプローチする新しい方法を見つけなければならなくなりました。これには、パーソナライズされた体験、地域でのイベントやコラボレーション、地域へのマーケティング・キャンペーンなどがより重要視されるようになりました。
全体として、パンデミックにより、日本および世界のラグジュアリーブランドは、急速に変化する市場環境を乗り切るために、より機敏で適応力のある行動を取ることが必須となりました。パンデミックがラグジュアリー業界に与える長期的な影響の予測はまだ難しいですが、消費者のニーズや嗜好の変化に対応でき、迅速にピボットできるブランドのみが、パンデミック後の世界で有利な立場になり成功することは明らかです。
ニコラ・ラフェノマンジャト(he/him)
エグゼクティブシニアコンサルタント
イーストウエストコンサルティング株式会社